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インターネッツ

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『小説とは何か』三島由紀夫『三島由紀夫全集』より

まとめ 新しい本を読むよりも,むかし感銘を受けた本を再読して,「小説」をそこに豊富に発見することがある。 『遠野物語』の一行。 「(幽霊が)裾にて炭取りにさわりしに,丸き炭取りなればくるくるとまわりたり」 この瞬間,幽霊が単なる主観から生じた…

『デジタルネイチャー』落合陽一 400文字要約と書評

要約 落合陽一はテクノロジーによって,近代の超克を図る。情報を圧縮することなく,〈現象 to 現象〉で滞りなく進行する世界を見据えている。十分に発達した科学技術は,人々の無意識化で実装され,自然がつくる生態系と見分けがつかない。 テクノロジーと…

『陰翳礼讃』谷崎潤一郎「谷崎潤一郎全集」より

まとめ 漆器は闇の中においてこそ魅力を帯びる。豪華絢爛な模様も,暗い場所で少しずつ底光りするようにできている。 蝋燭の灯の中で吸い物椀を手にとる。吸い物椀を前にして,これから食べる物の味わいに想いをひそめる時,忘我の境地にひき入れられる。日…

『「である」ことと「する」こと』丸山眞男『日本の思想』より

まとめ 権利を得た立場に安住していては,権利を失う。権利を行使「する」ことで,権利を維持しなければいけない。 福沢諭吉以後,職業の貧賤は「身分」ではなく「業績」で判断されるように移行している。 政治は「する」ことがもっとも必要な機関だ。政治に…

『思考バイアス』池内了 『疑似科学入門』より

まとめ 神秘的な体験に対する人間の仮説にはバイアスがかかりやすい。 例えば,「関連性の錯誤」がある。目立った二つの事柄をただ目立つという理由で結びつけて考える心的作用のこと。 「関連性の錯誤」に陥らない推論の方法がある。 Aが起こってBが起こっ…

『文学の仕事』-加藤周一『私にとっての二〇世紀』より

まとめ 文学は,人生または社会の目的を定義するのに必要だ。いまは科学技術の時代だが,科学技術は目的のための手段でしかない。 人生の価値を考えるためには,社会の約束事から自らを解放することが第一歩だ。統計的で,抽象的な考え方,つまり普通の,一…

『Not I, not I. . .』中沢新一『純粋な自然の贈与』より

まとめ インディアンには,贈与の文化があった。贈り物をしたり,お返ししたりすることで「贈与の霊」を動かす。贈与は,「もの」と「ひと」の間にきずなを生む。 それとは反対に,売買は分離の力をはらんでいる。貨幣は,無から有をつくりださない。そこで…

『日本文化私観』坂口安吾 『坂口安吾全集』より

まとめ 文学では,美しくさせるための一行があってはならない。「やむべからざる実質」が美を生む。実質の精神が小説の真骨頂であり,あらゆる芸術の大道なのだ。 美しさのための美しさは率直でなく,空虚だ。空虚なものは人の心を打たない。 公園をひっくり…

『異時代人の目』若桑みどり『レット・イット・ビー』より

まとめ 歴史の転換点,特に価値体系が大きく変わるような転換点のときには,歴史が整理されやすい。 記録として残るものはあっても「真実」は残されていかない。一方で芸術は,多義的であるが故に,内面の真実が包み隠されている。 生前評価されなかった芸術…

『アイオワの玉葱』長田弘 『詩人であること』より

まとめ 玉葱を辞書でひいて見ると,英語の辞書と国語の辞書で記述が異なる。英語の辞書は,味覚の特徴をあげ,国語の辞書は形体の特徴をあげている。 このような母語による差異を,私たちはどれだけ認識しているだろうか。同じ人間という考えにあまえて,母…